疲 労
筋肉の疲労を考える
私たちの体は労働やスポーツで動かした体のかたちを毎日のように疲れに応じて自由自在に変化させています。その主な原因は、筋肉の疲労です。私たちが体を動かす動きや静止の仕方が常に左右均等の動かし方であるとは限りません。両手でも右利き、左利きがあるように左右の手が同じように動かしているとはいえません。また、歩行にしても左右の足でそれぞれ違った機能をしています。それが原因で体を支える筋肉にも疲労が一側に集中して姿勢にも変化を起こすのです。
正しい姿勢と悪い姿勢とは
人体を背面から見て正しい姿勢とは次の通りです。
1.左右の下肢が同じ長さであること
2.骨盤の位置が水平であること
3.脊柱が骨盤に対して垂直である
4.両肩甲骨が水平であること
悪い姿勢はどういうことか
1.両下肢長に長短の差ができること
2.下肢長の長い一側に骨盤が引かれて水平が保てず傾斜(転位)すること
3.骨盤が傾斜するので、脊柱は垂直が保つことができず、骨盤の傾斜に応じて変化すること
4.両肩甲骨が水平を保てなくなっていること
横(側面)から見て正しい姿勢とは
横(側面)から見た正しい姿勢の判断は脊柱の弯曲状態で判断します。
脊柱は首(頸椎)が前方に弯曲し、胸(胸椎)が後方に弯曲しています。
次いで腰(腰椎)も首同様に前方に弯曲して、S字状の弯曲面を示すことです。
ゆがみの姿勢は、全身を過剰に緊張させ、骨格に移動や変化を起こさせます。そして脊柱を前後左右にゆがませ、内臓の働きを悪くさせ、様々な心身の症状や病気を引き起こします。
それらは肩こり、頭痛、腰痛、慢性の疲労感、生理不順、めまい、便秘、不眠症、自律神経失調症、うつ状態、集中力の低下、などの症状としてあらわれます。
運動以外に姿勢が歪む原因誘引はなにか?
1 環境が強烈に変化する場合
たとえば寒暖の激しい所を行き来したり、湿潤の刺激が強ければ姿勢に変化をきたします。
2 内部に病気を抱えた場合
内臓に病変がある場合、人間のもつ防御本能により患部に近い箇所を守るような姿勢をとります。
3 呼吸の仕方によっても姿勢は歪む
ヨガでは呼気は体を柔らかくし、吸気は体を硬くすると言われています。現代人は腹式呼吸を行う人は少なく、ほとんどが胸式呼吸を行っています。呼吸の仕方の違いによっても姿勢は変化します。
4 精神感情の変化によっても姿勢は変化します
感情の反応に呼応し、体も反応します。
5 食事でも変化します
食物のバランスをとることによっても変化はいきなり力学的に出てこなくても栄養、内分泌とまわりまわって体の歪みとして出てきます。
筋肉疲労はどのような場合に起きるのでしょうか?
第一は、運動性筋疲労(労働性)です。
運動や労働が原因で起きる筋肉の疲労です。スポーツは夢中で体を動かすようになります。その時に自分の体力以上の運動を実施して筋肉の疲労を起こしがちです。また高度な技術が要求される場合、同じ技術の練習を幾度となく継続します。そのため、それに使われる筋肉に疲労が重なり収縮残遺の状態になりす。労働もそれとよく似ています。同じ動作を繰り返しが原因で同じ現象を起こすようになります。それが回復しないまま運動や労働を続けることが多いので収縮残遺が強められて、やがて姿勢が悪くして、いろいろな障害を起こすことになります。
第二は、感情性筋肉疲労です。
感情の高まりは、筋肉の緊張となって現れます。嬉しい感情に対しては筋肉が緩み、嫌だとか怖いという感情に対しては筋肉が収縮します。
第三は、寒冷性筋疲労です。
温度の低下によって筋肉は、ゆるやかに短縮して、筋肉の収縮を起こします。
疲労で筋肉はどのように変わるのか
1.筋肉の収縮率が低下して、徐々にその能率が下がる
2.筋肉の硬さが増す
3.筋肉の緊張度が増大する
4.筋肉に「しこり」ができる
5.筋肉が硬直する
6.筋肉痛をおこす
筋肉が慢性的な疲労状態になれば、自律神経系に大きな影響を与え、その結果、自律神経系のバランスが崩れ、血流やリンパの流がおかしくなり、二次的、三次的な体の異常を発生、他の病気も生まれてしまうのではないかと考えています。
しかし筋肉が慢性的に疲労し、姿勢も悪く、体に歪みができれば異常感覚が起きるはずですが、何等感覚的に異常を感じないという人もいます。これは感覚鈍磨に陥っている人なのです。病気も急性病ほど苦痛を感じなくなるし、肩こりなどはガンガンに凝っているにもかかわらず苦痛を感じない人もいます。こういう人でも施術を始めると異常感覚が表れてきます。
筋肉疲労回復方法
第一、外部から疲労している筋肉に刺激を与える。
筋肉が疲労すると、ある刺激でその疲労の度合いに応じて「痛み」として応答します。刺激は指圧、マッサージなどが考えられます。
第二、温熱法。
筋疲労の原因は、筋肉を寒冷にさらすと起きます。(寒冷性筋疲労)
入浴などの温熱法で、血液の循環をよくすることで疲労が回復します。
第三、体操などによる筋肉の伸縮運動。
私たちは必要に応じて体を動かすことはあっても、多くの筋肉の収縮作用で、各関節の可動性を最大限まで動かすことを意識して行うことは、あまり少ないでしょう。ラジオ体操などは、体の筋肉の多くを左右対称に動かすように構成されています。この多くの筋肉を動かすことが疲労の回復法なのです。
第四、休養。
休養には「消極的休養」と「積極的休養」があります。消極的休養とは、休日や休暇には何もしないでゴロ寝などをして休むことです。
積極的休養は散歩や軽いランニングなどの運動をとり入れて筋疲労を回復することです。 石川利寛先生(『走る本』徳間書店)は積極的休養についてランニングを勧めています。その理由を次のように説明しています。「疲れた場合には、疲れた部分を支配する大脳の中枢に、抑制現象が起こっているからだと考えられています。この疲労時の抑制現象が疲労の回復の元になると考えられています。この時、他の部分を働かせるとその影響で疲れている部分の中枢の抑制現象がいっそう深くなり、そのために疲労の回復が早められます。この考えだと、疲れた部分以外の場所を動かすことによって、疲れが早くとれるようになります。日常の仕事では首筋や肩がはったり腕や腰が痛くなったりします。こういうときにはランニングを行えば、疲れた部分に良い効果を与えます。」疲れたときに運動すると、疲労が回復するもう一つの原因は、血液循環がよくなることです。血液循環が良くなれば、筋肉への酸素の供給がよくなり、疲れたためにたまっている乳酸などの代謝産物を取り除くことができます。あくまで軽く行う運動に限ります。逆に肉体が慢性疲労状態にあるにもかかわらず激しい運動を行うと脳がアドレナリンを多量に分泌することにより錯覚を起こし、気分的には良いかもしれないが、肉体は疲労がさらに上積みされていくこととなります。
筋肉の疲労を回復すれば姿勢はよくなるのか?
筋疲労を回復したら必ず、正しい姿勢に戻り、しかも筋疲労が原因でおきた障害が取り除かれます。しかし、脊椎や各関節、複雑な骨盤の転位は整復法が必要になります。
このような回復法を行ってみても緩和されていかないようであれば筋肉も慢性的に疲労していると考えられます。筋肉の疲労を完全にとり、運動系のゆがみを整復なさるほうがよいと思われます。