広背筋の歪みと緊張
腰痛を起こす要因は、腰椎の歪みと拘縮、また骨盤下肢の転位と緊張からだけではなく、上半身の筋肉の歪みと緊張によって引き起こされる。
そのひとつに広背筋が挙げられる。
広背筋は、背中にある筋肉の中で下方に三角形をなす最も大きく幅広い筋肉です。第5胸椎~第5腰椎の棘突起、第9~12肋骨を通って横に広がり付着し、一端は左右の上腕に付着しており肩関節の運動に大きな役割をしている。そして、起始が仙骨、腸骨稜から始まり上部から水平に外側方に向かっている。
広背筋の起始が仙骨、腸骨稜から起きているがゆえに広背筋の歪みと筋繊維の拘縮が腰椎に負担をかけ腰痛を起こさせる引き金となると考えられます。
広背筋は左右肩甲骨上肢帯の運動緊張と胸郭・肋骨の歪みに伴う平衡バランスの転位で左右に緊張に違いが起きると考えられますが、基本的には収縮緊張と伸展緊張の歪みが生じ、左右肩甲骨上肢帯が遠心性に運動されるか、求心性に運動されているかによって広背筋の運動緊張が変わっている。

仮に左肩甲骨上肢帯が求心静止性に運動し、右肩甲骨上肢帯は遠心性主導で運動されているとして広背筋の緊張作用と歪みの状況を考察するします。
左広背筋は肩甲骨上肢帯の求心緊張に作用し下方向に収縮緊張し、側胸部肋骨、前鋸筋も同時に収縮緊張させる。肩甲骨上肢帯の求心性緊張は上腕を後方に転位緊張させるために肩が後方に回捻転するようになり、肩甲骨の内転との連動でth12~L2の椎骨と肋骨周辺の筋肉を捻転緊張させている。この捻転作用によりL4・5、仙椎に負荷が生じると見る。
次に右肩甲骨上肢帯が遠心主導に運動されていると見た場合、広背筋は上方に伸展緊張し収縮率はひくい、上肢が過緊張にあると起立筋を含めた広背筋が内方向に収縮緊張を起こし、一部肋骨に歪みを起こす。この内方向の収縮緊張が肋骨下部を下垂緊張させるようになり、外側の広背筋に沿った周辺の肋骨部分に痛みを起こしたり、物を取ろうとして無理に腕を上げ伸ばしたりする反動で攣ったりするがあります。また内方向の収縮緊張によりL3・4・5付近を拘縮させるようになります。
長時間の座位姿勢のによる応力負荷と疲労からの姿勢の悪さからでも広背筋を緊張させることもあり、広背筋の緊張と複合されることで次第に胸椎が後弯し猫背姿勢となる。そして、広背筋全体が過緊張、拘縮するとth12~L2を拘縮させ、骨盤を引き上げることにもなるために腰椎を圧迫により反り腰となり慢性的な腰痛状態にさせていくと考察する。
運動不足による広背筋の筋力の低下、広背筋の運動性過緊張、そして過労などが要因で広背筋の緊張作用が左右交互に作用し広背筋全域を拘縮させてしまうと体幹全体を硬直状態にさせてしまい、慢性腰痛をはじめ、肩の運動機能の障害など身体に様々な悪影響を及ぼすと推測されます。